Modern Age Idol

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AKBグループのコンテンツマーケティング戦略を考える。

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今BtoB、BtoCに関係なく企業のマーケティング戦略としてコンテンツマーケティングという言葉が盛んに持て囃されている。

コンテンツとは中身(テキストや画像、動画)のことだが、つまるところ、コンテンツを使って商品を知ってもらおう、買ってもらおうということである。(なんなら企業ブランディングも)

この流れは情報流通が激しすぎて従来通りの広告が消費者に届かない、届いても無視される状況になっているので、企業や商品自体をメディア化して消費者に役に立つコンテンツを配布することで、企業や商品の好感度をあげるということが趣旨である。

コンテンツの制作・運用は金も時間もものすごくかかる割に、益が少ない。テレビスポット打って効果がバーンとでるような、即効性もない。費用対効果を求められるマーケティング担当者からすれば、なかなかキツい話である。

グローバル企業においては、コンテンツを制作し、それを極力手間がかからない方法で各国各地にローカライズする必要がある。コンテンツはなるべく国境を超えるような普遍的な内容の方が好ましい。

 

話はガラッと変わるが、昨日はHKT48のライブを見に横浜アリーナに行ってきた。

HKT48といえば博多を拠点とするAKBグループの一つで、先日の総選挙でも一位になった指原莉乃さんが劇場支配人をつとめるグループである。

AKBグループは愛知の栄(SKE)、大阪の難波(NMB)、福岡の博多(HKT)、そして来年立ち上がる新潟(NGT)、そして海外もインドネシアジャカルタ(JKT)、中国の上海(SNH)にそれぞれ劇場があり、そこに専属のグループが存在する。

 

AKBグループのコンテンツマーケティングとは一体どういった性質のものなのだろうか。

まずAKBグループはメンバー一人一人がコンテンツでありディストリビューターである。

メンバーは毎日コンテンツ(ブログ、vinetwitterGoogle+、755など)を作成しながら、ファンに向けて配信している。

メンバーは自分の夢(芸能界で売れる)のために必死にコンテンツを作成する。正直コンテンツを作成している時間に給料は発生しないだろう。しかし自分の将来がかかっているので、自らが素材となり、無料でコンテンツを提供するのである。そして自分の商品価値を理解しているメンバーは人気が出やすい。

AKBグループは現在約300人。300人が毎日配信するコンテンツは、いくらコアなファンでも消費しきれない。ここがAKBグループの強さであり、飽きられない理由である。飽きようにも、情報量が多すぎるので、飽きられないのだ。特にファンは。すべての情報を知り尽くしたいファン心理を捉えた、うまい戦略だ。そして総選挙でメンバーに序列を作る。これはGoogleで例えるならページランクみたいなものだ。総選挙で上位に入ればメディア露出ができる(google検索の1ページ目に表示される)が、ほとんどの人がgoogle検索の2ページ目以降は見ないように、上位のメンバーしか世間には認知されないだろう。

 

またアイドルグループのコンテンツといえば曲である。AKBも例外なく、オリジナルの持ち曲がある。その曲のほとんどの作詞はみなさんご存知、秋元康である。AKBグループは劇場曲と言って、シングルにはならない、劇場だけでしか披露しない曲というのも数多く存在している。数えたことはないが、CMの曲なども含めればすでに1000曲近くはいっているのではないだろうか。

 

世間の人が知っているAKBの曲というのは、ほとんどがシングル曲だと思う。一部のファンが騒いでいると言っても、このご時世に数百万枚のCDを売っているので、嫌でも耳にするだろう。

我が国希代のマーケッター秋元康は、ここに目をつけた。

各地、各国の支店グループに新たに曲を与える必要はないのではないかと。

昨日HKT48が「君のことが好きやけん」という曲を披露した。これはAKB48の「君のことが好きだから」のカバー、というかご当地方言バージョンである。

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他にも「AKB48」という自己紹介ソングは各支店で方言バージョンで受け継がれている。

下記が「AKB48」という曲のサビ前の歌詞である。

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そして下が「AKB48」と同じ曲のNMB48バージョンである

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この手法を採用することで、秋元先生の作詞作業は方言に変えるだけ、新しく曲を作る制作コストを抑えられるのである。

しかもファンからしても新しい曲を覚える必要がなく、普段親しんでいる曲で他のグループまで盛り上がれる、まさに一石二鳥だ。(さらに言えば売れてる曲だけローカライズすることで、ヒット確率も高められるので一石三鳥だ)

海外の姉妹グループにおいても同様である。

下記にAKBとSNH(上海)の「真夏のSounds good」を並べてみた。

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仮にSNH48のことを知らずに明日上海のSNH専用劇場に行ってみても、AKBのことを知っていれば、盛り上がれるのである。日本の音楽は言葉の問題があるので、海外では流行りにくいと言われているが、その問題を見事にクリアする手法である。AKB48はシステム(総選挙)であり、ネットワーク(支店運営)であり、コンテンツ(数の多いメンバー)ホルダーなのである。

 

ついでに下の動画はAKBの「ハート型ウイルス」という曲のJKT(ジャカルタ)バージョンだ。曲はインドネシア語で歌われているが、現地ファンの応援は日本語という奇妙な事態になっている。(ちなみにこの動画の1人仲川遥香さんはれきっとした日本人だが、JKTに移籍してインドネシア語を習得、今や現地でソロでCMに出るくらいの人気だ)

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コンテンツの制作コストを下げつつ、コンテンツをローカライズして配布していく手法は、今グルーバル企業が直面している課題の一つである。その一例としてAKB48を挙げてみた。コンテンツは普遍的な性質を持っているということが重要だ。AKBは「若い女性」、つまり男性本能に根ざしたコンテンツなので、日本以外でも通用する可能性が高い。強いて言えばロリコンが禁忌な欧米では根付かないだろうが、文化的に寛容なアジア圏では、十分拡大の余地があるだろう。

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